政府は,5月4日,新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を,5月末日まで延長することを決定しました。

マンション管理組合では,総会や理事会によって,意思決定をして,管理を進めていきますが,総会や理事会は,いわゆる「3密」が生じやすいため,現在開催が困難になっていることと思います。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は,全世界的に生じていますが,他国のマンション法は,どのような対応をしているのでしょうか。ドイツのマンション法の状況を簡単にみてみたいと思います。

ドイツのマンション法は、「住居所有権法」といいます。管理組合のような団体として,マンションに住居所有権者共同体があります。ただし,ドイツは,日本のように,理事会が管理運営の中心となる管理方式をとっておらず,総会で決定した事項を,「管理者」が執行する,という体制をとっています。日本だと,管理者は,管理組合の理事長が就任することが通常ですが(標準管理規約38条2項は,「理事長は,区分所有法に定める管理者とする。」と定めています),ドイツでは,一般的に,管理会社が「管理者」に就任します。

さて,ドイツでは,今回の新型コロナウイルス感染症に対してのマンションの対応として,どのような措置をとったでしょうか。

ドイツは,感染拡大が始まってすぐの2020年3月27日に、新型コロナウイルス感染症対応のための特別法を成立させています(民事法、破産法及び刑事訴訟法におけるCOVID-19パンデミックの影響を緩和するための法律6条)。住居所有権法のみでなく,会社法や刑事訴訟法など他の法分野にもまたがった,新型コロナウイルス感染症対策のための特別法を制定させているのです。

この法律によって、新型コロナウイルス感染症のために総会を開催できない場合の措置を定めました。具体的には、①管理者(上記のとおりドイツでは通常は管理会社が就任している)の任期が満了しても、最後に選任された管理者が引き続き職務を遂行すること、②新たな予算決議がされるまでは、直近で決議されている(通常は前の期)予算によって管理を継続することが定められました。

他方で、オンラインで行う総会の導入は、各マンションに設備があるとはいえないこと、技術的な障害が生じたときの法的リスクがあること等から、見送られたようです(コロナ危機における住居所有権法の変化Q &A 

ドイツのこのように素早い対策に,日本も見習わなくてはならないと思います。

(弁護士 佐藤 元)